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おくさまのすてきな暮らしっぷり。

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明日の記憶。

毎朝、ご出勤直前の相方はお玄関の下駄箱の姿見に映る
自らの今日の男前っぷり度にうっとりしながら
「あほぼんになってへんか 後ろ 見てくれ」
と、おくさまに言う。
(あほぼん=背広の襟が立ってたりして後姿が少々まぬけなこと)
「なってへんよ。今日も男前!気ぃつけや」
と、おくさま、朝からちょこっとリップサービス。

「ほな、行って来る!」
相方は元気一杯ドアを開けご出勤。

やれやれ・・・
外に一歩出ればええかっこしいのクセにさっ。
なんだよ、お玄関ではただのお子ちゃまおっさんやんか。
もうすぐ50歳。まだまだ元気にがんばってもらわんと・・・


ってな感じで・・・

おくさまはまた読後感想文を元気一杯書き散らかしちゃいます。

本日ご紹介するのは 荻原浩さんの『明日の記憶』でございます。

明日の記憶。_d0012167_13255051.jpg図書館でお借りしてはじめて読んだ荻原作品の本書は若年性アルツハイマーと宣告された50歳の広告代理店営業部長の壮絶な闘いが描かれていました。

ひとり娘も結婚間近、もうすぐ孫も生まれてくる。
妻には仕事に忙殺されてまだ何もしてやれないけど夫婦ふたりの老後の夢も時々頭をよぎります。
最近物忘れが酷くなり、頭痛や不眠も続いたので病院へ。
受診した医者から宣告された病名は「若年性アルツハイマー」。
父親をアルツハイマーが元で亡くしている佐伯さんはアルツハイマーがもたらす恐怖を
とことん知り尽くしていたのです。

日に日に失ってゆく記憶・・・
自分が自分でなくなってゆく・・・
不安、恐怖、絶望・・・
残された時間を闘ってゆけるのか・・・

若年性アルツハイマーと宣告された佐伯さんの視点で語られる物語は怖かった。
辛くとっても切ない物語だった。

じわじわと進行する症状。
それでも自分の記憶をなんとかして繋ぎとめようとする。
病気の進行に必死に抵抗しもがき苦しみます。

弱者の立場に置かれてこそ見えてくる
人の裏切り。
利用しようとする人の狡さ。
だからこそ確かに感じられる本当の人の温かさ。

ウチの夫婦もこの佐伯さん夫婦と同年代。
そんな夫婦の姿はどうしても自分たち夫婦と重なる。
奥さんの立場に感情移入。
佐伯さんには感情移入を通り越し我が身をその立場に置換えて読んでいた。
あかんわ、もうこれ以上読めれへん。
何度がそう思ったけど・・・
描かれる残酷さとはうらはらに文章は優しく暖かくユーモラスささえ時々感じて
人の人生の悲しさと喜びが混ぜこぜになっちゃって読まずにいられなかった。

失われてゆく記憶・・・
失いつつある佐伯さんだからこそ痛切にわかる記憶の大切さ。

記憶は自分だけのものじゃない。

自分の記憶が消えてしまっても自分が過ごしてきた日々は消えない。

ラストは幻想的・・・ちょっと戸惑った。

確かに奇麗事だけを描いてはいないけど
本当の介護が常に必要になったときはもっと壮絶なのだろう。

この物語の終わった瞬間からアルツハイマーとの本当の闘いがそこから始まる。
そう感じた。だから泣いてなんかいられない。そんなとても苦い一冊でした。

最後に支えあってゆくのはやっぱり夫婦なのかもしれへん。
ウチはふたりっきりやもんな。
相方がそうなってもおくさまがそうなってもほんとうにふたり一緒に歩いてゆけるんやろか。
愛情だけで乗り越えてゆけるんやろか。
なにげに過ぎてゆく日々の中で夫婦の絆はゆるぎないものになってゆけるんやろか。
けど・・・
もしもおくさまが記憶を失ったとしてもせめて相方にはこう言ってもらいたい。
「一緒に暮らしたお前とのおバカな日々を僕は忘れないよ」と・・・
by pinko_okusama | 2007-02-23 15:45

専業主婦・おくさまのすてきなはずがすってんころりんな暮らしっぷり。そんなえらいこっちゃでそやけど幸せな日々の記録です。


by pinko_okusama